なんと、もう出ないんじゃねーかと思っていた続刊が出るらしいので
グラビテーションEX.(2) (バーズコミックス ガールズコレクション)ご紹介。
「お金がないっ」の回でチラっと触れたと思うけど、オリジナルBLで私が初めて触れ、その時は良さがまったく分からなくてお友達に酷いことを言ってしまったという苦い思い出にまつわる作品である。
本作は、まだBLというものがジャンルとして確立していなかった時代にその先駆者となった記念碑的な作品である。腐女子たちを生み出し、アニメ化もされ、海外にも多数の腐女子を生み出したといわれている。
それまでの耽美路線とは一線を画した「同性愛に萌え、キャーキャーいいながら楽しむ」という姿勢は、おそらく同人の801(キャプ翼とか、バンド系ナマモノとかを無理矢理ホモップルにした腐った妄想を垂れ流す・・・ようなもの)で培われたものであろうと思われる。
B'zの同人誌を描いていたこの作者がどのようにしてプロ作家になったかはよく分からないが、ノーマルっぽいあぶのーまるな読み切り漫画を読むに、やはりこれもモチベーションなのだろう。同人誌で描いていた音楽系オリジナルBLをベースにしたストーリーでこのグラビテーションは連載を開始した。
ギャグシーンはほとんど「あーみん」調であり、まだ同人根性が抜けきっていないと思われるが、このおかしなバンド物語は徐々にコメディではなく、シリアスギャグの様相を呈して行き、あまりのぶっ飛んだ展開にも腐女子たちはキャーキャー言いながらついていったんだろうかと疑問に思わないこともない。
白いワニに追いかけられたと思しき終盤に至っては、とにかく爆発していたという記憶しかない。
トラウマ、爆発、シリアス、爆発、デート、爆発、失恋、爆発、海外移籍、爆発、帰国、爆発、失業、爆発。
この疾走感がたまらないのよ、とこの作品を勧めてくれた彼女が言っていたかどうかは覚えていないが、ハイテンションについていければ一気に読んでしまえる楽しい作品といえるだろう。
まあ、BLの素養があればの話だけどね!
本編の話はこれくらいにしておき、同人誌の話に移ろうと思う。
同人誌の6割以上は801であることは広く知られている。
801とは何か。諸説あるが、前述のように男同士の友情を恋愛に置き換えた腐った乙女の妄想を二次創作として自家発電したブツがやまなし・おちなし・いみなしの大同小異であったことから 頭文字をとって「やおい」→801と充てたという説は、それが何であるかを知らなかった幼少期に「あさりちゃん」で読んだので、たぶんそんなところだとう。
同人作家セレクションなるブツが刊行されているように、同人出身の作家や現役同人活動をしている商業作家は数多い。特に、パチもん臭い名前の大判アンソロジーに載っているのは大抵が同人誌の再録である。
同人作家が商業誌で活動しつつ、更に自分の作品を持ってコミケに行く。そういう精力的な(貧乏な)作家でもこの村上氏は凄い。おそらく、商業誌の活動は宣伝に過ぎず、同人活動の成人向けBLで稼いでいるのだろう。
ナマモノ同人→オリジナルBL(ナマモノ派生)→更にその派生の商業BL「グラビ」→成人向けBL同人「裏/リミグラ」
→思いだしたように刊行する商業続編「Ex」
なんという、ことでしょう!
仮にもアニメ化までされた作品を、いくらBLだからって・・・素晴らしい根性だ。
さて、この成人向け同人誌だが、たいていのアニメイトに行けば「オリジナル」のコーナーでありえねーくらいに分厚い背表紙・ヘンなタイトル・バカデカいという目立ち具合なのですぐ分かる筈であるので、お金に余裕があれば買ってみるのもいいんじゃないだろうか。
表現はかなりグロくって、輪切り的な表現、みさくら語など、どっちかというと男性向け風な描写が多いので読みやすかった。たぶん、BLじゃなくてショタ系にカテゴライズするべき。本家によるセルフパロってことで、人間関係を気にしなければ、大いに楽しめるのではなかろうか。ああ、それはやっぱりBLじゃなくて801の領分だよね・・・
801とBLの違いってなんだろう?同人か、商業かということと、二次創作か、オリジナルかというのも大きな要素ではあるけれども、まだ違いがあると思う。パトスっていうかね、熱く迸るイケナイものが込められ過ぎてるのが801だと思うんだな。ヤマがなかろうが、オチてなかろうが、イミがなかろうが、それでいいのだという割り切った姿勢、潔くって好きだな。
今、一番人気なのは「タイガー&バニー」ではあるけれども、多分あれは瞬間最大風速みたいなもので、長続きはしなかろうと思われる。
ジワジワと盛り上げてきて、物凄い状態になってるのが「忍たま」である。
あの供給過多なジャンルは、同人界の高齢化とともに、若い子と共有できる長寿作品ということで盛り上がってきたのだろうか。なんだかよくわからないんだけども、凄い人気であることには間違いない。
さて、供給側が「腐女子人気」を当て込んだ作品というのも昨今目につく。タイガー&バニーはほんとにそういう意味で「大当たり」だったわけだが、うっかり勘違いをしてバッシングを受けるということの方が多いだろう。
供給側がソッチをわかってるか、そうでないかを見分ける方法があるらしい。今市子氏の
萌えの死角 1 (ニチブンコミックス KAREN COMICS)というエッセイ漫画にそれは描いてあり、ナルホドナーと思ったので紹介させていただこう。
キスシーンから入る場合は、分かっていない。
分かってる人なら、キスさせない。みつめるだけ、手を握るだけ、抱きしめるだけ。奥ゆかしいのが本物だと。
ふむ、つまり貞本氏は分かってなくて、庵野氏は分かってるということか・・・新劇場版ではどうなることやら。
分かってる場合、そうでない場合があるというのはソッチ系の読者なら読めば分かるのだけれども、それはBLとか801とかじゃなく、私にとっては「TG(女装少年/男装少女)」だったり「TS(性転換)」だったりのジャンルで強く感じてしまいます。特に最近、雨後のタケノコのように乱発される男の娘系といったら、酷いものが多くてまいっちんぐです。特にひどいのがBLなんです!
私のオススメするBLではそういうことはないんですが、このジャンルは女性キャラが殆ど出てこないのが常であり、恋愛対象として描かれない為に、容赦なく貶められるのでした。
そんな中に「女性」でありたい女装少年がいればどうなるでしょう、火を見るより明らかですよね。
BLに出てくる女装少年は、報われない宛て馬であることが多いし、メインキャラである場合は男として扱われて強制的にBLの範疇にされてしまうのです。女装少年と最も相性の悪いジャンル、それは百合ではなくBLだったのです!
百合男子 1巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)では、百合界における百合男子(百合スキー君)がいかに肩身が狭いか、邪魔者でしかないかが語られていますが、それはBLの比じゃないと思うんだよ。
女装少年(偽娘)というジャンルはこれまでほぼ存在せず、801におけるコスプレでしかなかった。
801・BLにおける女子の存在感。それはなんだか女子に対する女性作家の屈折した感情を伺わせて、ちょっぴりキモチワルくなったりもするのである。誰もが恋愛感情をBL萌えに転換出来ると思ったら、それは大間違いだろうと小一時間・・・そう、大野さんに言ってるんですよ?
さて、私にはそういった素養がない。(ちょっとそこ、ウソとか言わない。)同性愛というものがタブーに感じられない為、それほど持ち上げる理由もなかろうと思うのだ。思想・信条の自由を謳うなら、当然でしょう。ただ、ジェンダー(性別)に関することについては色々思うことがあって、TSやらTGやらに傾倒しているのよね・・・これもまた屈折した気持ちの発露ではあるのだけれども、創作に関してなら割り切ってしまえるんじゃないだろうか。なぜならそこには自分がいないのだから。感情だけを移入してしまえば、自分の肉体とは切り離された物語をどんな人物にだってなりきって、楽しめるのではなかろうか。だから私は漫画が好きなんだろうなと思う。
最後に、このグラビテーションにおける女子キャラについて触れておきたい。
主人公(バンドマン)の妹、そして恋人(小説家)の姉、編集者、バンドメンバー(キーボード兼アレンジャー)などなど、女性キャラ率は結構高い本作である。この娘たちは皆正直であり、したたかで、パワフルなのである。
もしも、BLがすべてこのように健康的な女子で満ち溢れていたとしたなら、もっと素直にこのジャンルを享受できたのになあと思う次第である。
ピコピコ典子ちゃんもいいけど、タマネギ頭が一番好きかなぁ。眼鏡っこ萌え~♪
- 2011/10/22(土) 22:17:41|
- 雑記
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0