鬼畜眼鏡関係でBL雑誌を読んだら載っていたヘンなBL。どこがおかしいか?それは女子のパワーである!
田中鈴木さんの作品は、まずこの古臭い描線である。この太い、少年漫画のような線がたまらない。べ、べつに性的な意味じゃないんだからねっ!中身を読んでも、石ノ森系っぽいディフォルメを多用したアクションシーンに目が奪われる始末である。どうにもBLっぽくない。硬派なニオイさえするではないか。この人なんでBLとか描いてんだろ?そう思ってしまうのだが、他の作品を読めばその理由はよく分かると思う。
この人・・・コメディ以外はぜんぜん面白くないよ・・・!
ここに至って、ようやくBLっぽくないBL漫画の存在意義を理解したような気がする。
そう。
作者のモチベーション!それだ。
例えば、私が漫画を描くときに女装少年や女子がいない漫画では下書きだけで飽きてしまうように、彼の作者たちはBL要素がない漫画を描く気がしないのだ。かといって、男ばかり描いてるのもつまんない。
なるほど。私がBLにトライしようと思ったら、女装少年や女子を混ぜてやればいいのか!
・・・ん?話がだいぶ逸れたかもしれない。
ブサイク特集(BLのアンソロジー)で人気No.1だった読み切り作品が、堂々の連載化を果たした本作は、二人のブサイク男を中心とした学園ラブコメである。
間違いではなく、この表紙に描かれている二人がメインのブサイクなのだ。
キャラの描き分けというのは漫画表現において多少のハードルであるけれども、判子絵師がもてはやされる昨今ではあまり問題にされないことが多い。だが、リアル系ではない、最もファンタジー色が強く、イケメンパラダイスであると思われていたBLで「ブサイク特集」とはどういうことなのか。
そして、左はともかく、右のキャラがブサイクっていうのはどうだろうとお思いであろう。
そんなに腐女子たちにとって※のハードルは高いというのか? -否、そうではない。本書の内容は一部書店の店頭で読むことができるので、試し読みをしてもらえばすぐわかると思うのだが、この作品のキモは右のキャラ(佐藤)がブサイクであるということに尽きるのである。
顔がイマイチいけてない3人組は、それぞれモテない要素を備えていた。
1.チビである(主人公・吉田)
2.デブである(秋本)
3.バカである(牧村)
このままでは高校生活で彼女ができない。その原因ははっきりしているのだが、敢えて責任転嫁をするとしたら、超絶イケメンの佐藤が同じクラスにいるせいだ。
顔よし、頭良し、愛想良し、付き合いも良し。完璧超人であるように見える佐藤だが、どこか人付合いで一線を引いて、皆平等に接しているのが不自然であった。
唯一、「妙に絡む」「気に入られている」と言われるのが吉田。吉田本人は何故そうも佐藤に執着されるのかがわからず、このままでは引き立て役のまま高校生活を終えてしまうと焦るのだが・・・
クラスメイトの美少女(女子はほぼすべて佐藤ファン)に佐藤の本命が誰か教えてほしいと頼まれ、普段そんな機会もない吉田はホイホイ引き受けてしまう。
誰もいない場所で真意を訪ねると、佐藤は意地悪をして教えないどころか、自分にキスをしたら教えてもいいなどとからかう。
憤慨する吉田に、佐藤は更に意外な行動に出る。硬直している吉田にキスをして、本命はいるけど教えないと囁いたのだった。もしかしてそれって・・・
実は佐藤が小学校時代に吉田の同級生だった「超・肥満児」であったことが明かされ、元いじめられっこの佐藤が腹の底に隠していたのは、幼いころに植えつけられた根深い人間不信だと分かる。海外の肥満児矯正施設に入れられた佐藤が別人のようなイケメンに変身して帰国するまでに何があったのかは、徐々に明かされていく。
BLにもたまには女子がいっぱいいたっていいよね?
本作はキスシーン以上のラブシーンはまだ描写されておらず(作者はそれほどつっこんだエロシーンを描かない主義なんじゃないかとも思われるけど)、BLをあまり読んだことが無い初心者でも入りやすい部類じゃないかなと思われます。でも、これはちゃんとBLだと思うよ?
BL要素以外にも楽しめる箇所は多くて、クラスメイトのブサイク描写は念入りにキャラ分けされていて、女子に女装チアを押しつけられる回などは抱腹絶倒モノでありました。
そして、今市子さんのときにも触れたけども、女性作家によるBLというジャンルで描かれる「女子」は生々しい人間的な魅力があると思う。まさにレアもの。
ゲストキャラの女子は普通に可愛いし、萌える(BLしちゃってる男に片想いだから報われないのもいいんだなー)んだけれども、圧倒的に面白いのはモブの女子たちである。
イケメン過ぎる佐藤に熱を上げて、派閥を作ったり、協定を結んだり、公式ファンクラブを設立したり、佐藤に本命がいるらしいという噂を聞いては廊下で屍と化したり。
そこまではまあ、漫画だし、まだ普通の表現だと思う。まだだ、まだこんなものでは終わらんよ。ネタバレになるけど、彼女たちのパワーは凄まじいのだ。
妙に仲のいい吉田(主人公)をシメる。
お化け屋敷に入ったところを追跡し、暗闇でパニックを起こして将棋倒し、救急車で搬送され、ニュースになる。
佐藤を守るために格闘技を修め、つきまとう他校の女子とステゴロタイマンで勝負して圧倒的勝利を収める。
佐藤とのデート権を掛けた戦いでは、美術対決だと絵を破る暴挙に出、マラソンだと嵐でも中止にせず限界まで闘い続ける、なんという情熱か!
大いに間違ってはいるが、女子は女子で、それもまた青春なのだと思わずにはいられない。
ん?でも、もしかして※な女子が多すぎるから、この世界にはBLな男子が多いんだろうか。コロンブスの卵のようなお話である。
モブではない女子では、ドSで肥満児矯正施設仲間の艶子さんがいいキャラだと思う。
また、デブの秋本の幼馴染である洋子ちゃんもフツーに可愛いし、秋本ラブである点も応援したいし、モブとはまた違った強さを感じられて好みだ。
色んな意味でレアな女子キャラに萌える・・・これもまた、ひとつのBLの楽しみ方ではあるまいか?
- 2011/10/22(土) 20:42:29|
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